中国社会科学院研究生院学報をリリース

中国社会科学院研究生院学報をリリース

私は知事会に属していたときから、この間題をずっと提起していました。
そもそも地方分権のミッション(使命)とは何か。
誰のために、どんな目的でやるのか、というところで、知事会も市長会も総務省も間違えているのだと思っていました。
2000年4月には「地方分権一括法」が施行され、小泉内閣では聖域なき構造改革の目玉として、「三位一体の改革」(*1)が掲げられました。
形だけ見ると、確かに分権を進めようという動きになっていました。
ただし、リンカーンふうに言えば、これまでは「首長たちの、首長たちによる、首長たちのための地方分権」だった。
もっぱら国と地方自治体との権限や判断権の分配の話ばかりで、首長が自由に仕事ができるように権限移譲をしましょう、税財源を移譲しましょう、というものだった。
決して「住民の、住民による、住民のための地方分権」にはなっていませんでした。
例えば、大臣許可か知事許可かという例として、4ヘクタール以上の農地を農地以外に転用する場合、農地法によって農林水産大臣の許可が必要とされています。
知事会は、これが分権を阻んでいるとして、知事許可に切り替えようとした。
ただ、農地所有者からすれば、どちらでもほとんど変わらないんですね。
もし「悪代官」がいれば、かえって地元で判断するほうが悪い結果になることもある。
片山さんがおっしゃるように、何のための分権かという点を住民の立場から見ていないところに、おかしさがあると思いますね。
住民から見れば、分権というのは、国と首長連合が権限の奪い合いをしているだけにしか見えないでしょう。
そこには住民はいっさい登場しない。
だから、住民から見て「俺たちには関係ないな」ということになってしまう。
本当は、住民のための改革プログラムを作らなければいけなかったのに。
民主党政権は「地域主権は一丁目一番地」だと言っています。
国が上から地方に分け与える「地方分権」ではなく、地域から泉が湧くような、下からの「地域主権」改革を進めたいと言っているようですが、はたして民主党は新しい地方自治の姿をどのように描こうとしているんでしょう。
それがこれから浸透するのか、しないのか。
どう考えますか。
片山善博(かたやま・よしひろ)務省)に入省後、固定資産税課長、府県税課長等を歴任。
9年、鳥取県知事に就任(2期8年)。
改革派知事として知られた。
現在、慶應義塾大学法学部政治学科教授。
行政刷新会議議員も務める。
従来と違い、口では「住民自治が大事ですよ」と言っています。
もちろん、これは非常に重要なことだと思うんです。
ところが、地域主権戦略会議で「原口プラン」(*2)として提出されたものを見る限り、住民はほとんど登場していないんですね。
「麻生プラン」とか「鳩山プラン」など、従来の総務大臣の名前をつけた「プラン」シリーズの延長でしかない。
「原口プラン」には豪華絢爛たる項目が並んでいますが、総務省の顧問に自治体の首長が二十数名入っている。
これでは「首長主権」になりかねないな、と思う。
大風呂敷は結構なんですが、基本的な「住民」が抜けている。
地域主権でも地方分権でも、誰のためにやるか、といえば、住民のため、であるはずなんですね。
自治体は住民のためにあるんですから。
でも、これまでの自治体は、住民から見ると、満足度が非常に低い。
いろいろな地域で「みなさんの住む市町村に満足していますか」と開いてみると、ほとんどが「ノー」です。
この状態を脱却し、住民にとって満足度の高い自治体にすることこそが、分権改革の基本であるべきなんです。
ならば、現状で満足度が低い原因はどこにあるのか。
まず、多くの権限が住民から見て遠くにあって、身近にないから、コントロールがなかなか利かないということがある。
だから身近なところに引き寄せましょう、という目的で進めるのが、権限移譲とか、国の関与の廃止とか、税財源の移譲なんですね。
ところが、自治体に対する満足度が低い要因は、決してそれだけじゃないんです。
自治体自体に機能不全がある。
議会が機能していない。
首長がずれている。
そのずれを(1)三位一体の改革国の関与を縮小し、地方の権限・責任を拡大することを目指して、「国庫補助負担金改革」「税源移譲」「地方交付税の見直し」の三つを一体として行おうとした改革。
(2)原口プラン原口一博総務相が09年12月の第1回地域主権戦略会議で示した「地域主権戦略の工程表」。
おおむね10年夏までと、10年夏〜13年夏までの二つの期間に分け、第1期では「国と地方の協議の場の法制化」や「義務付け・枠付けの見直し」、第2期では、「ひも付き補助金の廃止」「直轄事業負担金の廃止」「地方政府基本法の制定」「出先機関改革」などを盛り込んだ。
例えば、多額の累積赤字を抱えた新銀行東京に対する追加出資なんか、都民は誰も賛成していませんよ。
ところが首長である知事は、あれを一生懸命推進する。
都議会がそれを止められなかった。
こうした状態に対して、不満が出るのは当然です。
新銀行東京は、反面教師として、とてもわかりやすい事例です。
都知事がこれまで以上にパワフルになって、自由にやりたいようにやれるようになることに、どうして都民が賛成できるでしょう。
こうした不満は、権限や財源の移譲だけでは解消できませんよ。
住民の満足度を高くしようと思ったら、権限移譲とか関与の廃止といった話ばかりじゃなくて、首長とか自治体行政に住民の意思がもっと反映できるようにしなければいけない。
では、どうすればいいか。
一番のポイントは議会です。
間接民主制がうまく運営されるように、議会が機能を回復すること。
そのうえで、間接民主制を補完する直接民主制として、住民投票などの住民の政治参画機会を増やす。
これがなければいけないんですが、この二つは今まで課題としてあがってこないんですね。
なぜならば、首長たちが嫌がるから。
首長は議会にあれこれ口を出されるのは嫌なんです。
まして、住民からやいやい言われるのはもっと嫌いですから。
議会の質が高くなって、厳しくチェックされるようになるよりは、これまでどおり、議会は機能不全のままでいてくれた方がいい、ぐらいに思っている。
そこに根本的な誤りがある。
これまでの日本の地方自治の最大の欠陥は、住民が自分たちの地域経営について、自治体のあり方について、自ら考える機会が極めて乏しい、ということなんです。
だから、「住民を信頼して任せてしまっていいんですか」という疑問がわいてくるのは、むべなるかなとも思う。
「ひも付き補助金」だ、「税源移譲」だ、「義務付け・枠付けの見直し」だとか、そんな議論ばかりでは、住民からすれば、毎日の暮らしに大した違いはないのでは、と思えてしまって、自治体のあり方について考える気も失せてしまうでしょうね。
どうして住民がこれだけ自治体行政から疎外されているのかといえば、地方税を議論しない仕組みにしていることが大きく影響していると私は見ています。
欧米の地方自治とは、その本質は税負担を決める仕組みだといっても過言ではない。
自治体がたくさんの仕事をすれば、当然その費用も増すから、税負担も高くなる。
それが嫌なら、仕事を増やすことをやめ、むしろ減らすようにする。
そのバランスをとりながら、仕事の量と税負担とをセットで決めるのが、地方自治そのものなのです。

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